海運業向け会計システム
「TRANS-Account」導入事例インタビュー
in Singapore

シンガポールでも
安定したシステム基盤に
支えられた会社に

DIAMOND STAR SHIPPING PTE. LTD.
Chief Financial Officer 神谷 修 氏

 三菱商事を親会社とするDIAMOND STAR SHIPPING PTE. LTD. はシンガポールで社船事業を展開している。同社は2011年に設立し、世界の海運業のハブとして機能する同地で新規ビジネスの獲得機会を広げようとしている。同社では、ITによる経営管理基盤を構築するにあたり、なぜTRANS-Accountを導入したのだろうか。

シンガポールで思うようなシステムに
巡り合えなかった

――「TRANS-Account」の導入経緯をお願いします。

神谷■ 当社は2011 年に三菱商事の100%出資先としてシンガポールに設立されました。現地で船舶保有会社を立ち上げるにあたって、CFO(最高財務責任者)の立場からまず考えたことは、「安定したシステム基盤に支えられた会社をつくる」ことでした。
 船主業を営む場合、造船会社との間で取り交わす造船契約、用船者との間の傭船契約、金融機関との間の借入契約等が主要な取引データになりますが、これらのうち各部門で共有すべきデータをシステムで一元的に管理し、後続工程に繋げる仕組みを構築することで、造船所に対する発注から引渡、さらには傭船・売船までの会計処理・決済・債権債務管理に至る一連の業務プロセスを効率的かつ効果的に処理したいと思いました。
 
 船齢・傭船料・通貨・決済条件などの取引基本情報を契約窓口となるフロントオフィス(対外的な窓口部門)がシステム入力し、この情報を社内の関係者(ミドルオフィスやバックオフィス部門)がそれぞれのニーズに応じてタイムリーに利用できる環境を整えれば、経営分析やリスク管理、予算策定や決算処理の作業効率が格段に高まると考えました。
 当時、海事クラスターが集積するシンガポールに行けば、そのような海運版ERP(EnterpriseResource Planning)が存在しているだろうという期待をして現地でのシステム選定作業に取り掛かりました。
 取引先や関係会社を訪問してシステムの機能や使い勝手を聴取し、ベンダーに直接コンタクトしながら、現地で利用可能なシステムを調査・研究しましたが、なかなか思うようなシステムに巡り合うことができず、最終的に絞り込んだのがエイ・アイ・エス社のTRANS-Account とTRANS-Owner でした。TRANS-Account は、船主業に必要な会計的機能のほとんどを備えていましたので、短納期でシステムを導入することができました。
 一方、TRANS-Owner は決算予測シミュレーション機能や船舶管理の予算取込機能を保持していましたが、先述したような契約管理等の上工程を管理する機能が不足していたので、傭船契約管理機能を一部補足するかたちで運航管理システム(IMOS)を導入し、両システムをインターフェースで繋ぐこととしました。
 また、造船契約や船舶管理に関しては、兄弟会社であるMC シッピングでTRANS-Owner のカスタマイズによる先行導入が進められています。

前月の収支を随時把握。人材活用でも一役買う

――経営的な観点からはいかがですか。

神谷■  「TRANS-Account」が軌道に乗ってから、月次での収支の流れがよりタイムリーに把握できるようになりました。以前は月次決算が確定するまで2 カ月間ほどかかりましたから、この違いは経営的にも非常に大きいと思います。特に年次決算の時期は、本社の数字をまとめている時は

近年の決算業務ではヒューマンエラーの
発生余地を極力排除する経営基盤が必要

――こうした一貫したシステム基盤整備がなぜ必 要になるのでしょうか。

神谷■  将来的に船隊規模を拡大していこうとするなか、数十隻単位の保有船舶やSPC(特別目的会社)を管理していくためには、重要な取引情報や会計情報を表計算ソフトなどで管理していたのでは早晩行き詰まるだろうと考えていました。
 表計算ソフトは変更や加工などの柔軟性に富んでいますが、その反面、各部門の判断で、データが簡単に上書きされる傾向があり、会社全体として保持すべきデータが散逸して、データ間の不整合が生じたり、正確性が損なわれて、それを補正するため二重、三重入力の手間を招いたりすることがあります。また、担当者の異動や退職などによって、データ管理の連続性が失われる可能性もあります。
 当社は個社の決算データを、親会社である三菱商事の連結決算に繋げる必要があるため、四半期ごとの決算処理では正確性とともに迅速性が要求されます。国際会計基準(IFRS)の採用やオフバランス情報の開示など、近年の決算業務は複雑化・高度化しており、これらの要求に応えていくには、ヒューマンエラーが発生する余地を極力排除する経営基盤が必要になる訳です。
 会社の業務リスクを統括していると、ヒューマンリスクが顕在化して肝を冷やすことがあります。業務を行う過程でヒューマンエラーは付き物ですが、IT が得意とする大量・単純かつ迅速性が求められる転記および照合といった作業はシステムに極力任せることが業務効率化のカギになります。人はシステムの情報を有効活用し、あくまでも適切な判断をすることに注力する体制をつくることが肝要です。

システムの導入は
「既製服か、オーダーメイドか」
で変わってくる

――新規導入の際、どういった点に注意しましたか。

神谷■  システム導入にあたっては、定型的かつコアとなる情報と非定型の情報を区別することも重要です。非定型の情報は、変化に富むマネジメントニーズに柔軟に対応できるEUC(End User Computing)が適しています。しかしこれら全てを基幹システムで解決しようとすると、システム投資は莫大なものになってしまいます。
 システムを導入する場合、自らの業務に合わせたシステムを開発するのか、あるいは標準型のシステムに合わせて業務フローを変更するのかという議論が交わされることがあります。洋服の設えに例えるなら、「既製服か、それともオーダーメイドか」といった意味です。
 この判断を行う上で重要となるのが、自らの取引や業務フローの再点検だと考えています。自らの取引や業務は業界スタンダードと比べてどこが異なっているのか、組織内の業務フローや部門間の役割を見直したり、業務自体の必要性や重要性を振り返ったりすることもIT 化を成功させる上でのポイントです。
 また、カスタマイズや開発を進めるにあたっては、ユーザーとベンダー間の要件定義の段階で、システムが兼ね備えるべき会計機能・内部統制・リスク管理・業務効率化等のニーズを明確にした上で、充分な擦り合わせが必要です。

――目的意識を持ってIT 化をすることが重要だということですね。

神谷■  IT が根源的に抱えているリスクの側面にも注目する必要があります。日常業務でITが正常に機能している場合、その存在を殊更意識することはありませんが、不具合が発生するとその影響がとても大きいことに気付かされます。また、日々使い難さを感じたり、変更や修正の都度、システムバグが発見されたりするような状態は、企業としてIT への対応が適切にできているとは言えません。
 システムは稼働して当たり前と思われがちですが、そのためには、システム稼働に至る要件定義やユーザー受入テストなどの段階で、事前の確認や手続きを怠らないことが重要で、これらの点を含めてIT と適切に向かい合うことが必要と考えています。

会計領域に留まらず業務システム面の機能の
さらなる充実に期待

――実際に導入した効果と機能、今後のシステムへの期待や取り組みについてお聞かせ下さい。

神谷■  当社では、傭船契約や船舶管理契約に関わるデータを業務部門が入力し、それを経理部門で確認する体制が確立し、効率的に業務が進んでいます。また固定資産管理や借入金管理の機能も内蔵されているため、一連の業務はスムーズに進んでおり、TRANS-Accountは有効に機能してくれています。
 加えて当社の場合は、勘定科目や取引先コードを親会社のそれと同期させたことで、連結決算処理などが、効率的に進んでいます。TRANSAccountが担う会計領域に留まらず、先ほど述べたような上工程の取引情報をシステム管理するため、業務システム面の機能がさらに充実していくことに期待しています。
 今後、TRANS-Ownerの領域が進化することは、船主やオペレータ業を営む会社にとって、非常に期待されているところであり、ユーザーの声やニーズを汲み取って、海運版ERP のデファクトスタンダードとして、さらなる進化を遂げていって欲しいと考えています。

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